2Dec

目次
はじめに
少しでも英語が話せたり、大学の英文学科を卒業していたりすると、職場や地域、サークルなどで「通訳して」と頼まれることがあるかもしれません。
若いころに留学した経験があったり外資系で働いたことがある人たちも、そのような頼まれごとをされることが多いですね。
しかし、通訳とは英語ができる人であっても、そう簡単にできるものではありません。
特に、読み書きを中心とした学習を中心にしてきた人にとって、スピーキングはとっさにできず、ましてや通訳となるとかなり難易度がたかくなります。
読み書きには時間に余裕がありますが、スピーキングにはタイムリミットがあります。
あっというまに言葉は流れてゆき、数秒前に言われた内容も脳にとどめることが難しいことがあります。
会社や参加している地域活動で、あなた以外あまり英語が話せる人がいない環境のなか、ときどき通訳を頼まれるという人はこの講座が約にたつかもしれません。
英語の聖域、プロ通訳者のトレーニング法で学ぶ。アルク「通訳トレーニング入門」。
ただし、こちらはその名前にあるように、あくまで入門編です。
この講座を修了してもプロ並みの通訳になれるわけではありません。
しかし、通訳のプロが実際に行っているトレーニング内容となっていますので、学習する価値はおおいにあります。
私はこの講座をとって本当によかった、目からうろこなことがたくさんあった、と感じています。
通訳トレーニングの21のトレーニング内容
この講座でトレーニングできる21項目を、以下に列記します。
テキストには「トレーニング法(の名前)」「使うもの」「目的」「方法」が掲載されていますが、ここでは「トレーニング法」と「目的」のみをご紹介したいと思います。
基本的な通訳トレーニング
- リスニング・・・聞いて理解できるスピードをあげる
- 音読・・・音読スピードをあげることで聞いて理解できるスピードをあげる
- リピーティング・・・リスニングの際のスピードをあげる。発音やイントネーションなどの音声分析をする。
- シャドーイング・・・聞きながら話す力をつける
- スラッシュ・リーディング・・・文を聞いて頭から理解する。情報処理速度をあげる
- スラッシュ・リスニング・・・文を聞いて頭から理解する。情報処理速度をあげる
- 順送り訳・・・英語の語順に従って訳せるようになる
- 区切り聞き通訳・・・聞いたものをすぐに情報処理する
- メモ取り/メモ化・・・話の内容を覚えておく助けとする
- サイト・トランスレーション・・・文を頭から理解し聞いている人がわかりやすい訳をする
- 同時サイト・トランスレーション・・・聞きながら訳を言う力をつける
- クイック・レスポンス・・・語彙を補強し、英日・日英双方向変換の反射神経を養成する
- ミッシング・ワーズ・・・わからない語があっても文脈を把握できるようになる
- メモリーレッスン・・・リスニングの際の集中力をアップし文を記憶しておけるようになる
- パラフレージング・・・話の内容を自分なりの表現で記憶しておけるようになる
- リプロダクション・・・記憶力やリスニング力を強化し英文をすばやく組み立てる力をつける
- リライティング・・・どのような語句が主語になっても文を完結させられるようになる
- サマライゼーション・・・話の重要な個所を見極める。要約通訳の予備練習
- 同時通訳・・・話の内容をほぼ同時に聞き手に伝える
- 逐次通訳・・・話の内容をできるだけ正確に詳細に聞き手に伝える
- 要約通訳・・・話の内容をかいつまんで聞き手に伝える
上記のトレーニングのなかで私が特に「おもしろい」と思ったのは「ミッシング・ワーズ」でした。
通訳のさいに、周囲がうるさい、マイクの感度が悪いなどの悪条件、または聞こえていてもその単語がわからないときに、文脈や背景知識からその語を推測して全体を把握しようとするトレーニングです。
音声では雑音が入り聞こえない部分があり、テキストでは下の画像のように穴埋めをするようになっています。
英語の聖域、プロ通訳者のトレーニング法で学ぶ。アルク「通訳トレーニング入門」。
私が「通訳トレーニング入門」を受講した理由
私の受講時期は、3年前の2017年12月からです。
その時点で、英語のスピーキングはオンライン英会話などを利用して訓練を続けていました。
私の職場は医療機関で英語対応をかかげています。
オンライン英会話で、会話は以前よりだいぶ向上しました。
ただ、忙しい外来時間のなかで外国人患者さんと医師やスタッフとの間に入り「通訳みたいなこと」をするのに私には何のスキルもありません。
ここは基本的なことを学ぶのが早いのではないか、と考えていたところにたまたま見つけたのが「通訳トレーニング入門」でした。
「入門」というタイトルも「私でもついていけるかも」という気持ちになった理由です。
通訳トレーニング入門の開始レベル
アルクによりますと、通訳トレーニング入門の受講開始レベルは、英検:準2級~2級、TOEIC:550点となっています。
実際にテキストを手にした感触では、難しい語彙はほとんどなく英検準1級~1級で必要とされるような難易度の高い語彙はでてきません。
このトレーニングの目的は、あくまでも通訳の基本的な技能を学ぶことであって難しい単語を覚えることではないのです。
パッと見て「見たことも聞いたこともない」ような単語ばかりだと、とたんにやる気が失せてモチベーションもがた下がりになりますが、この講座はそのようなことはありません。
通訳トレーニング入門の学習期間
テキストが4冊あり、第1週から第4週まで、一週間に4日学習するように設定されていて、4カ月で終了するプランです。
もちろん、自分の生活ペースに合うスケジュールを組んでかまいません。
私はほぼ毎日テキストに取り組んでいましたので、割と早く進んでいったほうだと思っています。
あまり長く時間をかけず、短期間で集中して終わらせ、あとは2週目、3週目とテキストを使い倒してゆくのがよいかと思います。
録音することの重要性
ご自分の英語を録音して聞いたことはありますか?
この講座では、随所にマイクのマークがあります。
そこは「自分の発話を録音して客観的に聞く」部分です。
私は自分の英語の録音を聞いたときに、あまりにも下手すぎてショックを受けました。
自分としてはもう少しまともな英語が話せていると思っていましたが、幻想でした。
やはり、客観性を得るためには「録音」は必須です。
自分の英語を録音して聞くのが嫌でスキップしたい気分になりましたが、だんだん現実を受け入れて慣れてきます。
コツコツ続けているうちに、少しずつレスポンスもよくなってきました。
録音することには以下のような大きな効果があります。
私が得られた「録音」効果は
- 話すときに口角があがるため、声のトーンもあがり滑舌がよくなった
- この録音をだれかに聞いてもらうことを意識して話すようになった
- 自分が考えている以上に「早口」で話していたのでゆっくり確実に話すようになった
「早口」については、ネイティブ講師についてレッスンを受けているときにも何度も注意されました。
話すスピードが速いとそれだけミスも多発するので、ゆっくりでよいので確実な発話をするように、と指摘されています。
日本人は英語ネイティブではないので早口で話す必要はまったくなく、それよりはゆっくりでよいので正しい英語を話すようにとのこと。
もっともですね。
英語の聖域、プロ通訳者のトレーニング法で学ぶ。アルク「通訳トレーニング入門」。
通訳トレーニング入門を学習する環境
ヒアリングマラソンやEnglishJournalは、たくさん聴く多聴と、じっくりテキストに向かい細部まで聴き取る精聴との両方を組み合わせて学習することを推奨しています。
しかし、通訳トレーニング入門は多聴には向かない、というが私の感想です。
机に向かい、テキスト、PC(またはタブレットやスマホ)などの音源、ICレコーダーなどを用意して、じっくり学習するのが適しています。
実際自分で発話しますので、一人になれるお部屋、一人になれる時間が確保できると気が散りません。
私は家事や散歩のときに、よくヒアリングマラソンやEJの音源を聞き流して多聴時間としていますが、この通訳トレーニング入門では行っていません。
机でテキストとPC音源、マイクのセットで学習しています。
テキストは永久保存版
4冊のテキストには、あらゆる通訳場面が掲載されていますので、飽きずに進めることができます。
たくさんのヒントがわかりやすく解説されていて、繰り返し開いて定着させてゆくのが適しているテキストです。
中に「ニッポン歳時記 in English」というコーナーが8回あり、日本の年間行事や風物を英語でどのように説明したらよいのかの例文があります。
これは、丸覚えする価値があると思っています。
参考までに8回分の内容は以下のとおりです。
ニッポン歳時記 in English
- 正月・おせち・門松・初詣で
- 成人の日・節分・ひな祭り
- 花見・ゴールデンウィーク・こどもの日
- 七夕・お盆・盆踊り
- 彼岸・月見・七五三
- お歳暮・冬至・大みそか
- お見合い・結婚式・三々九度
- お通夜・告別式・お香典・法事
おわりに
私は、アルクの教材は2012年に初めてヒアリングマラソンの半年コースを受講しましたが、当時の私にはレベルが高すぎて挫折。
その後、NHKのテキストをはじめとして他の教材やオンライン英会話で少しずつレベルアップし、2017年に「通訳トレーニング入門」2018年から再度の「ヒアリングマラソン」を受講して、ヒアマラは3年目になりました。
今の自分にとって、ヒアリングマラソンも副教材のEnglishJournalも、ちょうどよいレベルに感じます。
もちろん簡単ではありませんし、ニュースなどは一度で内容が完全にわかることはありません。
ちょっと手ごわいけれど、まったく手がでないわけではない、頑張れば理解できるという教材が一番です。
ただ、それを見つけるのには少し時間がかかったり、遠回りしたりします。
2012年は英語学習を再開したばかりで、当時の私にはヒアリングマラソンは荷が重すぎました。
「通訳トレーニング入門」はとてもオススメの教材ですが、トレーニング内容は決して簡単ではありません。
しかし簡単ではないからこそ、トレーニングのしがいもあります。